2026.08.05

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あごを広げる?それってうまく行く? 

あごを広げる?それってうまく行く? 

昨今、小学校の歯科検診に行くとあごを広げると称される装置を装着している低学年のお子さんをよく見ます。矯正歯科医から見れば、確かに、効果がありそうなケースもあれば、これはあごを広げても十分ではないと考えられるケースにも装置が入っているお子さんを見ることもあります。どのようなケースに効果がありどのようなケースに効果が薄いのでしょう? その要素を解説します。

要素① 歯の大きさ:

そもそも歯の大きさが著しく大きい等はあごを広げても歯が並びにくい要素です。日本人の上あご中央の歯の平均的な大きさは約8.7mmです。これを超えて10㎜近くあるようだとあごを広げてもきれいに並べることができる可能性は低くなります。一方、歯が平均的な大きさであれば特別何もしなくてもそれなりに並ぶ可能性もあります。(下)

 

経過観察を行ったケース。下あごの前歯は特別な拡大処置を行わなくとも生え替りを観察するだけで叢生(歯がデコボコに生えること)が軽減するケースが一定の割合ある。

要素② あごの形態:

あごの形態にも広がりやすく効果の出やすい形態や広げても影響が少ない形態があります。奥行きが大きく、あごの成長方向が水平に近い方向である場合(下図左上)や、下あごあごの先であるオトガイ部が十分発達している場合(下図左下)です。一方、唇が閉じられず常に口が開いていたり、閉じられてもあごの先にしわがよるようなケース(下図右上下)では無理して広げたとしても余計に唇が閉じられず、口呼吸になり長期的に影響が出るケースもあります。

 

 

左の子は右の子より上あごの線と下あごの線が交わる点がより後方にある。あごの成長方向が水平方向に近いことを示している。左側の子の方が歯列を広げるには向いている骨格といえる。

右の子は口が閉じにくくあごの骨格の高さはあるが、歯列を広げても口が閉じにくい状況はひどくなることはあれ改善することはない。歯を並べるうえではあごの骨格の高さが高いことは有利にはならない。

 

要素③ 上下のあごの位置:

あごを広げる治療は一般的には側方、横方向に広げることが多くを占めます。上下のあごの位置のずれのあるような上顎前突では下あごの前方成長を促すような手段をともに行わないと、あごは広がったけれども奥歯のかみ合う位置のずれが残って出っ歯のままなんていうケース(下図)につながります。

 

 

他院から転医して来られたケース

永久歯を並べるため歯列の拡大が異常なほど行われている。骨格の分析を行うと上顎前突であり、口腔内を見ても奥歯のかみ合う位置のずれがある。(上)

異常な拡大処置が行われていたため2年間観察を行った。拡大した歯列は後戻りするため、後戻りで治療前に近い歯列幅まで戻ったことを確認したのち(中)、治療を行った。(下)

拡大した歯列は保定を行わないと50%以上後戻りする。十分な診断を行わない安易な拡大処置は良い結果を生まない。

 

要素④ 口腔習癖:

舌の癖などがあるとあごを広げることで症状が悪化する場合があります。舌の癖などがかみ合わせに影響していないかどうかをキチンと診断する必要があります。

要素⑤ 永久歯の欠損の有無:

2番目や5番目の永久歯は先天欠損となりやすい歯です。以前に岡山大学の先生が調べた調査によると10人に一人くらいは永久歯の先天欠損があるという報告がありました。当院ではこの報告程高確率ではありませんが、先天欠損がある場合、永久歯での治療がほぼ確実に必要になることと、この際、残った乳歯の抜歯が必要になったり、上下の歯数の差の改善が必要になったりすることが多いためあごを広げる治療を行わない方が良い可能性が高くなります。

これらを回避して効果のある治療とするためには骨格や歯の大きさなどの分析を行いあごを広げる治療が必要か? 効果があるのか? を診断することが大切です。このためにレントゲンの規格写真であるセファログラムは必須の検査です。セファログラムを撮影、分析せずにあごを広げるという診断は信用しない方が良いかもしれません。たまたまうまく行くかもしれませんが・・・